園のこだわり

育児に疲れたお母さんに贈る詩

2022/06/14

 令和4年6月14日(火)

 

ママの毎日

 

独身の頃、ヒールの靴が好きだった。お酒は苦手だったけど友達と過ごすお酒の場の楽しい雰囲気が好きだった。

好きな音楽はミスチルでいつも好きな時に聴いていた。電車の中でゆっくり本を読むのも好きだった。

お風呂では半身浴をして、美容院には二か月に一回は必ず行っていた。

お化粧するのも好きだった。

一人で行く映画館が好きだった。

流行りの雑誌を買い、流行りの曲を聴き、流行りの服を着て、流行りの場所へ好きな時に

でかけた。

そんな私は今、、、、、、、、

 

泥だらけのスニーカーを履き、子供達の着替えやオムツが入った大きなバッグを肩にかけ、ちゃんとした化粧もせずに、髪を一つにくくり、毎日子供達の手をつないで公園へ散歩に行っている。

聴く曲は、ミスチルからアンパンマンマーチに変わった。

眺めているのはファッション雑誌から、子供の母子手帳や、幼稚園の手紙に変わった。

考えていることは、今日の夕食のメニューと子供が幼稚園から帰ってきた後のおやつ、お風呂、夕飯の流れの確認。

今日の天気で洗濯物が乾くかどうかと、明日の子供の遠足が晴れるかどうか。

最近眠くなると激しくぐずる下の子どもを、昨日つい怒ってしまったから、今日は早く寝かせてあげよう。今日は怒らないでおやすみしよう。

そんなこと。

毎日押し流されるように迫ってくる日常があるから。

キレイに片付いた部屋も、大の字で朝まで眠れる夜も、ゆっくり塗れるマスカラも、何だかもう思い出せない。

そう。

思い出せないから私達はつい忘れてしまうのだ。

この毎日がずっと続かないということを。

一人でゆっくりお風呂に入れる様になったら、湯船の中あなたと向き合い数を数え、柔らかく響いたあなたの声を、私は思い出すのでしょう。

一人で好きなだけ寝返りをうち眠れるようになったら、どこまで寝転がっても隣りにいないあなたのぬくもりを私は探すのでしょう。

好きな音楽を好きなだけ聴けるようになったら、この部屋の中にあふれていたあなたの笑い声を思い出して、私は泣くのでしょう。

好きなだけお化粧に時間をかけられるようになったら、私の洋服を引っ張り、膝の上によじ登り、私のやる事なすことをお邪魔してくるあなたのその小さな手を思い出して、私は泣くのでしょう。

好きなだけヒールが履けるようになったら、笑い転げるあなたを追いかけて走り回り、泥だらけになって遊んだあの空を思い出して私は泣くのでしょう。

自分とパパの洗濯物だけを回す日々が訪れたら、泥まみれの靴下も、おしっこを失敗したズボンも、牛乳をひっくり返したシャツも、洗濯カゴにない事を知って、私は泣くのでしょう。

あなたの足音がしない部屋の掃除機をかける日が訪れたら粉々になったビスケットの食べこぼしも、小さなおもちゃの部品も、あなたの細い柔らかな髪の毛も落ちていないことを知り私は泣くのでしょう。

一人で好きなことを好きな時に好きなだけ出来る様になったら、どんな時も「ママ」「ママ」と私を呼び、どんな時も私の事を探しているあなたの姿を思い出して私は泣くのでしょう。一体いつまであるのかな?一体いつまでここにいてくれるのかな?そして、そんな事を考えているうちにまた、今日も終わってしまった。私達の日常は「子供が側にいる『今』」だから。子供から離れて一人になれた瞬間が特別に感じて、好きな事を堪能出来る喜びを嚙み締めるけれど、でも、自分の人生を考えてみたら、特別なのは、本当は、、子供が側に生きているこの毎日の方。

でも、私たちはそれを忘れてしまう。何だかずっと続くような錯覚を起こして毎日を過ごしているけれど、大変に思えるこの毎日に数えきれない愛しいが散りばめられている事を、私たちはいつか知るのです。子供達が、この世に生まれてから今日まで、ママとパパのために全身を力いっぱい使って思い出をまき散らしてくれていたことに、私達は過ぎてから気付くのです。ママの毎日はママでいられる毎日です。私達はこの命が尽きるまで、どんなに子供と離れていても子供を思い、心配し、愛し続ける子供達の母親だけれど、、、でも、子供達のそばで「ママ」でいる事が出来る日のなんて短いことかを、いつか思い知るのでしょう。

今日もあなたは、屈託のない笑顔で振り向き「ママ」と言って、両手を広げてこちらに飛び込んでくる。忘れるものか!絶対に!絶対に!絶対に!あなたの前髪を切りすぎて笑った昨日を、あなたを怒って自分に涙が出た今日を、あなたの寝相に笑った夜を、あなたがつんでくれたシロツメクサの白さを、あなたに許された私を。あなたがいてくれるこの毎日を、私は絶対に忘れない。ミスチルも好きだけど、Eテレの歌に感動する事を知った。ヒールも好きだけど、スニーカーの安心感が好きになった。自分の事が一番大切だった。

そんな私に自分の命よりも大切だと思える存在がこの世にはあると教えてくれた子供たちに、、、、心から 感謝を。

 

私はこの詩に出逢い、、感動し、涙がでました。子育て真っ只中のママさん、終わりのない育児にうんざりすることもあるでしょう。でも、子育ても必ず終わりがきます。

物事には必ず最後があるのです。この詩のように今をどうか楽しみ、日々を大事に過ごして下さいね。

長くなりました。梅雨入りしました。雨の音を聞きながら自分の命より大事に思った産まれた時の我が子に思いをはせて読んで頂けたら嬉しいです。

 教頭 市村恵美子

未就園児の方はこちら