理念ブログ~理事長の耳と園長の目~

言葉の大切さ

2017/04/28

3・4月は年度末・年度初め、幼稚園は卒園式・入園式があり一般の会社も異動の時季です。出会いと別れの季節でもあります。そんな3月のある日、一人の男性が園を訪ねてくれました。彼は園が使用している印刷機メーカーの支店長で、本社へ異動になったとわざわざ挨拶に来てくれたのです。三十代の若さでその店の支店長になった彼の七年の支店勤務を経ての転勤だとのことでした。彼の仕事に対する情熱や顧客にたいする対応のすばらしさで、ちょうどカラー印刷ができる機器を探していたこともあり機械を導入したのが彼の来園した折にちょくちょく話をするきっかけになったのですが、銀行の担当者以外で私のところに改まって異動の挨拶に来る人はほとんどいなかったので彼にその理由を聞きました。
私自身彼とどんな会話を交わしたかもうすっかり忘れてしまっていましたが、彼は来園時の私との会話が社会人として生きていく上で今でも役に立っていると、当時私から渡されたという新聞の切り抜きまで持参してくれました。私も覚えていたその切り抜きは作家の猪瀬直樹が「故郷」を作詞した高野辰之について描いた「唱歌誕生―故郷を創った男」がテレビドラマとして放映された時の視聴者からの反応についてのもので、「こころざしとエゴとの差」というタイトルの寄稿文でした。内容は「故郷」の三番に唱われる「こころざしをはたしていつの日にか帰らん」の「こころざし」は単に個人的な地位の上昇志向を意味するのでなく、卑小なエゴイズムとは全く異なるのだということを述べているものでした。この切り抜き以外にも私との会話で心に染みた言葉が色々あったと語ってくれました。あまりに買い被られて汗顔ものでしたが、彼との短い別れのひと時は私を嬉しく幸せな気分にしてくれたのでした。
しかし、彼が帰ってから彼との思い出を振り返りつつ思ったのは、私自身は全く覚えていないけれども相手の心にこれほど染みている言葉がある・・・ということは、同じく全く意識しないまま相手を酷く傷つけてしまったこともあったのかもしれない・・・ということでした。時に人に勇気と希望を与え、時に人に失望させ絶望の淵に落とす、言葉。わかっていたつもりでしたが、彼のおかげで再認識し大いに反省させられた一日でした。
このことがあって私は、私たち幼稚園教育にかかわる者とりわけ日々現場で、未来を担う子どもたちと接している職員にこそ「言葉の大切さ」を知ってもらおうと改めて強く思い、29年度の職員研修テーマの1つは「言葉の大切さを学ぶ」にすることを決めました。
今月5日・6日と2日に亘って行った「一円対話」がそれです。さらに半日保育の13日、午後半日すべてを使いその道の第一人者を講師に迎えての「ペップトーク研修」がそれです。
これらの研修は、あえて意識して相手、とりわけ子どもたちの心にプラスに響く言葉掛けをするというものです。日々の保育の色々な場面で、どんな声掛け言葉掛けをしたらこども達にとってより良くより効果的に響くのか・・について学びました。今後もますます学びの機会を持ちますが、この研修をとおして本園の教員の子どもへの声掛けがさらに素敵なものになり、子どもたちの心の成長におおきく繋がるよう願わずにはいられません。

理事長  小山直久

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